奨学金事業

母親たちの涙

村での活動最終日、いろんな人が私を訪ねてきてくれました。

その時に見た、母親たちの涙がすごく心に残っています。

1人は、シングルマザーのお母さん。

刺繍を頼んでいて、その刺繍を持ってきてくれたついででした。

「私の娘にこんなチャンスを与えてくれて本当にありがとう。あの子にはお父さんがいないから、これまで、誰かからこんな風に支えてもらえることなんてなかったの。娘の夢が実現するように、応援してくれて本当にありがとう。あなたはこの村のいろんな人たちを助けてくれていて、心から感謝しているわ。」

と、いつもは元気で明るいお母さんですが、この時は涙を浮かべながらこの言葉を私に贈ってくれました。

私より実は年下のお母さん。ここまで本当に強く、たくましく、娘さんを育ててきたんだろうな。グアテマラには、シングルマザーへの手当など一切ありません。母親一人で、子どもを育てていくって、母親役も父親役も一人でやらなければいけないのだから、本当に大変なんだろうな。その中で、甘えられる人もいなくてがんばってきたお母さん。その中で娘に対する思いの強さを涙の中に感じました。

 

もう一人のお母さんは、コロナ禍特別奨学生の高校生のお母さん。
コロナで仕立て屋の仕事が一切なくなってしまったことから、息子二人の学費が払えなくなってしまった状況で、去年出会いました。

「この支援がなければ息子たちは休学する予定だったの。本当に本当にありがとう。」

目には、涙が浮かんでいました。

「私たちを支えてくれた里親さんにどうしても贈り物をしたくて、これをつくったの。」

と、ご自身で刺繍した布でお父さんがミシンでポーチにしたものをお披露目してくれました。

私「こんなにたくさん。大変だったでしょう。こんなにいただいちゃっていいんですか。」

というと、

「自分の心でやりたいと思ってやったことだから、いいのよ。どうしてもこうしたかったの。」

とまっすぐした瞳でそう伝えてくれました。

 

 

きっと、勉強がしたくてもできない辛さは、子どもよりも実は親の方がしんどいのかもしれない。

愛する子どもの希望を叶えてやれない、
その機会を提供できないという無力感。

私は子どもたちを応援したい気持ちで始めたこの奨学金事業ですが、実はその親こそがこの機会を心から喜んでくださっているということを改めて知りました。

これからも、子どもたちとその家族、そして日本の里親さん、サポーターさんとみんなで絆を深めつつ、子どもたちの未来が拓かれるような活動をしていきたいと思いました。

 

母親たちの涙、きっと忘れません。