心と会話

「星は美しい」と教えられる大人なんて、誰もいない。

朝の5時から日本とつないでオンライン授業なので、いつも4時に目覚まし。外にある洗面所に顔を洗いに行くのだが、今日は星が美しかった。

雲がないときは、真っ暗な空にキラキラ星が輝いていて、少し眺めていれば流れ星だってすぐに見つかる。

 

私、今日初めて知った気がする。

「星って、なんて美しいんだろう。」

 

多分、星が美しいということは子どものころから、教えてもらっていたと思う。

大人になってからだって、デートで夜空を見に行って「きれいだね。」なんて言っていた時期もあったような?

 

でも、私は今日、初めて本当の星の美しさを知った気がするのだ。

 

そこで、私は確信したことがある。

「星が美しい。」という事実を本当の意味で伝えられる人など、誰もいないということ。

星が美しいということは、言葉で伝えるものではなく、それぞれの心で感じてこそ、真実になる。

むしろ、その人の心で感じたものではなく、人の言葉を借りただけの情報を頼りに、物事を判断しているうちは、それは真実ではない。

 

だから、いくら学校で教師が、「食べ物には、感謝しましょうね。」とか、「お花は美しいね。」とか「お勉強は大切なのですよ。」と、言葉で言ったって、子どもの心には、何も残らない。子どもは、一人の人間として、自分自身の心で感じなければ、本当の意味でそれはその人の血と肉にはならないのだ。

 

では、子どもにはその心があるだろうか。

私は、多くの日本の子どもには、そんな心はないと思う。

少なくとも私にはなかった。

 

母は花が好きで、「きれいだね~。」といつも言っていたが、別に私はきれいだと思っていたなった。

花は花だ。

ただそれだけ。

 

でも、30歳を超えてから、妙に花の美しさに心が奪われる自分がいる。こんなにもけなげに、自分が置かれた場所で懸命に自分色に咲いている花たちに心が動かされる。

 

何が変わったのか。

 

それは「孤独」という、すべての人が大人になる過程で向き合うべく感情を知ったからだと思っている。

 

人にはそれぞれに人生があるが、私にも私なりの人生があり、ここに来るまでに、耐え難い孤独を味わってきた。

大切な人から見放された孤独、
自分を疑う孤独、
未来を信じられない孤独、
過去を恨みたくなる孤独、
理由のない孤独。

 

私は、一人でいるときによく涙する。

自分のことが嫌で嫌で、消えてしまいたいと思って涙した涙。
愛する人を思って、その人に会えない時間に悶えて涙した涙。
自分を愛してくれた人が私に与えてくれたものに対する恩を感じて涙した涙。

どの涙も、私の心に孤独を教えてくれた。

でも、そんな孤独を知ると、日々の様々なものが美しく見えるようになった。

花も、空も、緑も、星も。

夜空に輝く星がこんなにも美しいなんて、私は知らなかったのだ。
私は感動で胸がいっぱいになった。

それは、絶対に孤独を知ったからだ。

孤独を知らない人生だったとしたら、私はいつまでも星は星。花は花。と、

それくらいの感情しか感じられない人間だっただろう。

 

親に守られ、すべて必要なものは与えられてしまう子どもは、「美」を自分の心で感じることなんてできないと思う。

 

だから、私は大人が子どもに言葉で教えられることなんて、何一つないと思う。

すべては、子ども自身の心で物事を見つめ、そこから感じたものでなければ、真実はない。

 

私はもっと子どもたちは失敗する機会を与えられるべきだと思う。

できないことに挑戦し、自分の無力さを実感し、自分のちっぽけさに涙して初めて本当の学習者としてのスタートラインに立てると思う。

 

そのためには、大人が自分の無力さを知るべきだ。

親や教師は、子どもに何一つ教えられないということを自覚すべきなのだ。

そうすると、子どもが持っている本来の力を信じるしかなくなる。

そして、子どもは自分の足で立てると信じ抜いてくれる大人が一人でもいたら、自分の未来を信じ、他人を愛し、志をもって自分の人生を描けるようになるのではないだろうか。

 

日本人の幸福度が低いのは、孤独を避けているからだと思う。

日本には、簡単に孤独を紛らわせるものがたっくさんあるから。

表面的な「美」を追いかけ、空っぽの中身を向き合わないまま時が過ぎていく。

 

自分の中にある孤独と向き合えるのは、自分しかいないし、

モノや他人に救ってもらってはいけない。

自分一人で向き合うには勇気がいることだけれど、それを避けている間は本当の意味で自分の人生を生きられないのではないだろうか。

 

私は、最近年をとることが楽しい。

自分が孤独を知れば知るほど、感じられるものが増えていく。

今まで気づかなかった、愛と美を感じとれる目が養われていく。

きっと、私は10年後、20年後、30年後、もっと深い愛と美を知っていくんだろう。

それは、どんな未来だろう。どんな感情だろう。

そんな自分が楽しみなんだ。

 

孤独というものを経験できた人生でよかった。
すべてを消し去りたいと思った過去も、
この人のせいで不幸になったと恨んだ人も、
なんて孤独な人生なのだと、夕焼けを見ながら涙を流した時間も、

すべてが今日私が見た星の光をより濃くしてくれた。

それらはすべて、かけがえのない私の財産である。