このような今まで行ったこともない狭い道の先に、彼の家はあった。
スペイン語が話せないお母さんは、先生の通訳を通して私と会話。
快くおうちの中へいれてくれ、撮影も許可してくれた。
小さなお庭には、売るための鶏が何羽かいた。
ここがその男の子ペドロのおうち。部屋はこの一つだけ。
右のベッドはお母さんとおばあちゃんが、左のベッドにペドロとお兄ちゃんが寝ているという。
マヤの言葉ツトゥヒル語の通訳を先生にしてもらいながら、家庭の経済状況を聞く。
お母さんの仕事は、民族衣装の刺繍。
頑張って働いても、一週間で700円くらいしか稼げないらしい。
お兄ちゃんは、去年まで中学校に行っていたけれども、服や靴、宿題で必要になる雑費などをとうとう払えなくなり、今年からはもう学校へ通わず働いている。
ペドロ自身も、午前中は学校へ行き、午後は近くの大工屋さんでアルバイトをする。
午後2時から6時まで働いて、なんと4時間の労働でもらえるのはたったの150円。時給ではなく、4時間働いて150円だ。
これが、児童労働というものか。
部屋の中で、ビーズ製品を作っている机があったので、これはお母さんのもう一つの仕事なの?
と尋ねると、これは、ペドロが空いた時間に作っているとのこと。
私は、このビーズ製品を見た瞬間に、涙が出そうになった。
まだ11歳の子どもがこれだけ一生懸命働いて、母親を助けようとしている。
この鳥のビーズを12羽つくって、材料費を引いて利益として受け取れるのはたったの750円程度。
それでも、一羽一羽丁寧につくってる姿が想像できて、胸が痛くなった。
そのけなげな姿に心を打たれた。
台所には、おばあちゃんもいた。
これだけ厳しい状況の中、家族4人で暮らしている。
複雑な状況があり、お父さんはいないとのこと。
母親は、子どもたちに勉強を続けてほしいと思っている。
でも、やっぱり現実的にお金に余裕がない。
ペドロと二人で話をした。
一つ一つ授業で出される課題が楽しいんだって。
純粋に勉強が好きなんだって。
これからも勉強をしたい。
でも、お母さんは難しいと言っているって。
勉強ができたら、そのあとは何したいの?とたずねてみた。
将来は、先生になりたい。
なんで先生になりたいの?
お金をたくさん稼いで、お母さんを助けたい。
決めた。
まずは、この子から。
もっと時間があったら、いろんな子どもを見てみて、その中から選ぶべきだったかもしれない。
でも、私の直感が、この子だと言っていた。
彼と二人で話して、彼の「勉強したい」という真剣なまなざしをみて、力になりたいと思った。
最後に私の思いを伝える。
「あなたを支援していきたい。でも、もし勉強を続けていくなら、一生懸命勉強してほしい。そして、いろんなことを学んで、力をつけて、まずはお母さんをしっかりと助けて。そして、いつかあなたが他にもこまっている人がいるときに、助けてあげる人になってほしい。約束してくれるかな。」
「約束する。」
彼の目は、とても美しかった。
私が、こんなことを彼に約束させる身分でもないと思う。
でも、私も私の素直な願いを聞いてほしかった。
約束してほしいといったが、実際には約束を守ってくれなくてもいいと思っている。
もし、彼が途中で教師ではなく、別の道を選んだり、途中で夢を諦めなければいけない状況になったとき、私は彼を責めない。
でも、私は彼を通して、夢を見たいなと思う。
まずは、賛同者を募る前に、私からはじめてみる。
そこから、日本で協力したいという人があつまればもう少し活動の規模を広げていけるかもしれない。
でも、今は焦らず、まずはこの男の子ペドロの人生と向き合って、夢を膨らませてみたい。
支援することは決めた。
ここから現地の信頼できる人に相談しながら、支援の具体的な方法を決めていく。
それにしても、この元CPの奥さんは、とても正義感が強くって愛のある人なのだ。
ペドロの家からの帰り道、ある家から子どもがギャーギャー泣く声が聞こえてきた。
この先生は、知り合いだというわけでもないのに、この家の人に声をかけて、何があったの?と聞いていた。
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