グアテマラ学習塾

福岡県田川市立金川小学校の実践より

今日(4月19日)は、福岡県田川市の小学校の実践を見させていただきました。

お邪魔させていただいたのは、5年生の教室。

田川市では、市全体で100ます計算や音読などの隂山メソッドを取り入れているようで、学校単位を超えて、市でチームになっているようでした。

校長先生にお話を伺っても、このメソッドの導入前と今では、子供たちの学力はもちろん、日々の行動に落ち着きが見られるようになったとおっしゃっていました。

私自身も、この活動は学力を鍛える以上に、行動の荒れを正し、落ち着いた生活を送れるようになるというまた別の次元の効果があることを見学の中で実感的に感じるようになってきました。

今日、主に見させていただいたのはこの学校でも全体で取り組まれている「集中速習」という学習の進め方。これは、算数の単元で数時間かけて習う単元をたったの1時間でやってしまうやり方で、100ます計算でクラスの8割程度が2分を切れるようになった段階だと、導入しやすいものなのだそうです。

(ちなみに、この5年生の学級では、100ます計算はひき算を5分で扱っており、早い子はなんと47秒で100問解いていました。そういう子は、5分で400問の百ます計算(100ます4回分)ととあまりのある割り算のプリントを解いていました。ものすごい基礎計算力だと感じました。特別支援学級の児童も一緒に混ざっていましたが、指を使いながらではあるものの、5分間という時間を最後まで集中を途切れさすことなく、やっている姿を見て、とても驚きました。)

このクラスで、私は初めて集中速習の授業というものを見させていただきました。

先生も新しいクラスになってからは、初めてやるということだったのですが、子供たちは去年からほかの担任の先生からも同じようにやっていたそうなので、特に戸惑いはなさそうでした。

初めに別の話が少しあったので、40分間の授業でした。

授業記録

教師「今日は、5年生になって初めての集中速習をやっていきます。」

児「いえ~い!」

初めに集中速習をやるよというと、いえ~い!という声が上がったので、驚いた。
3時間分を1時間でやるというので、普通なら「え~」というマイナス発言が聞こえてきそうだが、子供たちはやる気である。

本時の単元は、事前に宿題で予習をしてきたという「小数のかけ算」だった。

机の上には、教師自作の集中速習プリント1枚と筆記用具のみ。

★問題との出会い
はじめにプリントの「ゴール問題」(小数点のかけ算)の計算1問を全員に音読させ、「これができたら終わり」ということを確認し、説明はゼロでいきなり子供たちに解かせる。

時間は2分。

子供たちは問題が解けたら、教卓へ行き、教師に丸付けをしてもらう。

一発で丸の児童もいたが、ほとんどの子は不正解であった。

丸がつかなかった子供たちは、

「え?なんで?は??」

と心の声を漏らしながら、自席に戻り、もう一度考える。

この時点では、多くの児童は混乱しているようであった。

ここでタイマーが鳴り、全員自席につく。

混乱中の児童に「できなくっても、大丈夫。今日一日がんばったら、この問題が簡単になります。」とこの時間を全員で乗り切るぞというような士気を高める声かけがあった。

初めに自力で解けない問題に出会うことで、頭の中の思考が加速しているように感じた。

★しくみを理解
そこから、全体で小数点の仕組みを解読。

ここでは、教師の話を聞く場面、ペアで話し合う場面、発言者の説明を聞く場面など、いろいろと場面が切り替わるのだが、とにかくその切り替えが非常にスムーズ。与える時間配分も1分や2分と、とても短い単位で活動が切り替わる。
教師の指示も短く1度だけで、余計なことは言わない。

普通の学級ならば、切り替えの場面で数名遅い子がいるので、もっと時間がかかりそうな気がするが、ここでは教師の指示がしっかりと通っており、短い時間の中にいくつもの活動があると感じた。そこに、授業のメリハリがうまれているようだった。

★小数点の打ち方を練習
ここから、また各自問題を解くシーンがあるのだが、「できたら立つ」という指示があった。そして、できた子同士でチェックしていた(あとから先生に聞いてみると、あえて子供たちの体を動かしているのだそうです)。

タイマーがなると、子供たちはすぐに席に着き(この時、教師はいちいち席に着くように言わない)、再び全体確認でもう一度ポイントを抑える。

くじでランダムに選ばれた6名が、前に出て、解き方を説明。
話を聞く方の雰囲気もとてもよい。学級内の優しさを感じた。

★しくみを理解したうえで、新たなかけ算のひっ算を解く
3問自力でやらせ、できたら教師のもとへもっていく。教師は、始めの数人を丸付けすると、あとは、彼らに丸付け役を任せ、教室をまわる。

後半に差しかかってくると、理解できた子供たちが教師の代わりに丸付けをしたり、つまずきのある子のところに行ってサポートしたりと、全員やっていることはそれぞれだけども、誰も休んでいなかった。

早く終わった子供たちは、「おかわり問題」といって、プラス4問解く(それも終わった子は、裏一面にある問題に取り組む)。

誰一人「やることがない」状態はなかった。

★ゴール問題再挑戦
最後にはじめの2分で取り組んだ問題と同じものを解かせる。
ほぼ全員が正解。最初は、解けずにもどかしそうにしていた子たちもみんな笑顔になっていた。

教師「3時間分終了、いえ~い!」
全員「いえ~い!」

と、なんとも爽快な雰囲気で授業は幕を閉じた。

 

私が感じたこと
・教師の和やかな表情。始終子どもたちができることを信じて声をかけていた。教師の表情、教師の声かけが、授業の9割をつくっていると感じた。とにかく教師の姿が印象的。

・実際の授業は40分であったが、子供たちの変容がありありとみられるドラマのような40分だった。初めは、「わからない~~!」とぐずぐずしていた子供が、最後には笑顔で「簡単じゃん!」という姿に変わっていた。これは、子供たちの満足度も高いだろう。

・ここで見た実践は、低位の子供こそを救える手法なのでは?と感じた。私が見た授業では、理解がゆっくりの子供たちもいたが、確かに彼らにも成長があった。教師はその子供たちにべったりとくっつくのではなく、ところどころ声をかけ、あとは自分で考える時間もしっかりと与える。一般的な学級なら、ここで低位の子どもは固まり挑戦することを放棄するか、または不機嫌になり、学級の雰囲気を重くしていくとろだが、この学級の子どもたちにはできなくても挑戦する素地が備わっている。おそらく学校単位で入学時から取り組んできている100ます計算などの陰山式の効果だと思う。

・子供たち同士で教えあう文化も定着しているので、学級がチームとなって一人残さず、ゴールを達成しようという雰囲気があった。独り言を言っている児童や集中できずにごそごそしてしまう児童を叱ったり、指導したりすることはなく(周りの児童も意図的に教室内で動かしているので、そこまで目立たない)、ある程度自由にさせておくのだが、気が付くと本人のタイミングで学習に戻っていて、最後にはできるようになっていた。教師が叱責する場面は一切なく、教室は始終和やかな雰囲気であった。私自身は、見たことのない雰囲気であった。

・とにかく切り替えがすべてにおいてすばやい。40分の授業の中で、場面がどんどん変わっていくのだが、教師の短く、一回の指示で、学級全員が速やかに次の活動へ移っていた。私は1日のうちに30回くらい言っていた「早くしなさい!」という言葉を言っていた自覚があるがそのようなセリフは一度も聞かなかった。1年生のころから積み上げてきている隂山メソッドがこういうところにも生きていると感じた。

まだまだ書き足りない気がしますが、とりあえず、私が見たこと、そして感じたことをまとめてみました。

授業を見させていただいた学校、そして先生方へ感謝いたします。
本当に多くを学ばせていただきました。

はやり、百聞は一見に如かず!!