奨学金事業

最後の候補者

先週の金曜日に行った子どもたちのセレクション。

8名に合格を出すつもりが、どうしても7名までしか自分の中で合格が出せなくて、あと1人の枠をどうしようかということになりました。

翌週月曜日には、合格者発表をすることになっていたので、すぐに動く必要がありまして、そこから急いでほかの学校の先生と連絡をとり、1人の候補者を見つけました。

日曜日の朝、この最後の候補者の家庭を訪問。

 

彼の家は、大工屋さんで家には作業場がありました。

「昨日、こいつの最初の作品がちょうどできあがったんだ。これがその作品だよ。」

といってお父さんが見せてくれたのがこちらの棚。

最初から仕上げまですべて一人でこなしたのだそうです。

細部を見てみると…

とってもきれいに仕上がっていて、これは器用な子だなぁと思いました。

そこから、お父さんと候補者である男の子と私とで三者面談。

いろいろと家庭の事情や今後のビジョンなどを聞いてから、男の子にほかの候補者と同じテストを受けてもらいました。

まずは、百ます計算。

問題用紙を見た瞬間、彼は

「あ~。これね。」

という反応をして、にやっとしました。

私「多分、学校でやったことあるよね?」

というと、

「うん、いつも先生が僕たちにこれをやらせるんだよ。」

と教えてくれました。

彼の担任の先生は、とても賢い女性の先生で、私が研修会で伝えたことを根本から理解して自分の教室で実践してくれた柔軟な先生です。

ですから、私も彼女の教室で学んでいる生徒だから、期待はできるだろうと思っていました。

でも、金曜日にほかの候補者の出来を見ているので、期待はしないと決めていた私。

いざ、初めて見ると…。

あれ?

最初の行は9の段からで、ほとんどの子が立ち止まっていたところなんだけども、彼は淡々と答えを書いていく。

しかも、字がものすごく丁寧。

私みたいに、スピード勝負!で雑に字を書くのではなく、彼は1の段だろうと、0の段だろうと、7や8の段だろうと、そのスピードは変わらないのです。ゆっくり丁寧に、でも淡々と数字を書くのです。

こういったところから、非常に彼の誠実で堅実な物腰を垣間見ることができました。

結果は、なんと…。

4分で全問正解!!!

 

金曜日は、5分で86問が最高点でしたが、彼は、それより1分短く満点とりました。

(この子は、なんか違うぞ!?)

そう思った、初めのテスト。

次に、算数の問題のテスト。

四則計算は全問正解。

時計の問題や面積、文章問題には間違いがあったものの、驚いたことが一つ。

金曜日にテストを受けた12名の候補者は、誰一人として分数の問題が解けませんでしたが、なんとこの子だけは約分の問題が解けていたのです!

日本の小6なら、おそらく7割くらいの子どもはこの問題はできると思うのですが、各校代表の優秀な生徒でもこの問題はだれも解けていませんでした。

そもそも、これはかけ算、わり算の知識がないとできないし、分数が何なのかわかっていないと理解もできない問題です。

約5年前に小学校教員に対して同じ問題を出したのですが、この問題が解けたのは、180名中87名で、全体の半分以下でした。

その中で、彼が解けていたことはとても驚きましたし、やっぱりあの優秀な先生のもとで学んでいるからだと思いました。

その後、最後のエッセイでも彼は、美しい字で自分の夢をたくさん書いてくれました。

最後に何か質問ある?と聞くと、金曜日に同じように聞いた12名の候補者からは、だれも質問はない。と返しましたが、彼はいくつか質問があって、どんどん私に聞いてきました。

「ぼくは、英語が全然できないんだけど、今何したらいいかな?どんな勉強したらいいかな?」

「レッスンの時間は何時になるの?」

などなど。

 

そして、最後に

「ぼく、今からでも英語を勉強したい。何かできることあるかな?次までなにか宿題くれないかな?」

と。

雰囲気はおとなしめの男の子なのですが、勉強したいという意欲がにじみ出ていて、この点にも驚かされました。

彼の中にある学業へのハングリー精神を見ました。

 

普段彼は午前中に仕事をして、午後に勉強するそうです。

山へ材料となる木を取りに行くなど肉体労働もかなりしているようで、こういう環境の中、勉強も怠らず積み上げてきたところが本当にすごいなぁと思いました。

 

最後に彼と出会えてよかったです。

迷うことなく、最後の枠は、彼に与えることを決めました。

 

これで、8名のプログラム参加者が確定!

実際に、相手の顔が見えてくると、俄然やる気も出てきます!

 

さぁ、新たな2か月の始まりです!

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その後のお話。

あまりに彼の出来の良さに驚いたので、帰り道で担任の先生に電話。

「すごかったよ。彼、百ます計算、4分で全問正解だった!教室で何してるの??」

と聞くと、

「さきが作ってくれた百ます計算のカレンダー使って、ずっとやってきたよ。休校中で今はあまりできていないけれど、学校に来たときは、いつもやっているよ。彼くらいのレベルなら、ほかにもあと5,6人いるよ。」

と言われ、さらに驚いた。

 

やっぱり、子どもがどれだけ学力を身に着けるかって、その担任の先生の力がかなり大きいなぁ。

改めて、私のミッションはこういった優秀な先生を次世代にたくさん送り込むことだと思いました。そうすれば、その次の世代、私がこの世からいなくなった後も、きっと何か受け継がれていくものがあるはず。その時、自分の存在は思い出されなくてもいい。私ではなく、ここに住むグアテマラ人の力で次世代へとつなげていってくれたら、私はそんな未来を心から嬉しいと思います。

だからこそ、今の子どもたちによい教育が受けられる機会を与えたいのです。