奨学金事業

英語プログラム参加者のセレクション

インタビューや家庭訪問をする中で、子ども一人一人の家庭環境、学力、やる気、情熱など、本当にその子を評価するものってそれぞれにあって、私はこの奨学金事業を行うにあたって、いったい最後はどこで決めたらいいのか、わからなくなった先週。

 

そこで、みんなを集めて同じ試験を受けてもらうことで、最終判断しようと決めました。

試験内容は、以下の3点。

①算数(百ます計算と小学校算数の問題)

②スペイン語による作文(テーマは「私の未来へのビジョン」)

③口頭面接(スペイン語と英語)

 

今日の午前中に12名の児童を集め、感染予防対策のため2グループに分けてこの試験を実施しました。

これを行ったことで、見えていなかったものが明らかになり、より児童理解が深まりましたし、私がどういった子どもたちと一緒に活動していきたいかということもより明確になってきました。

とりあえず、今日のことを記録します。

 

①時間の感覚

連絡しておいた試験時間より前に集まったのは12名中、7名。
つまり、5名はこの大事な選考会に遅れてきました。
正直、これはここグアテマラでは普通の話です。でも、私はここも評価に入れます。

 

②百ます計算

この百ます計算は、4年前にこの村に導入した。特に、元パイロット校では私と一緒に1年間みっちりと毎日やっていたし、コロナ前まではほとんど毎日やっていたようなので(2年前に来た時に、継続してやっていたことを確認)やり方はみんな知っていました。

初めに、少し練習する時間を設けたうえで、10×10の100ます計算に5分で取り組んでもらいました。

今回ここに来ているのは、各学校の先生から推薦された児童であるので、かけ算はそこそこできるだろうと思っていたけれど、結果は…。

あれ…。

思ったよりできていない…。

私も、帰国後3年たっているので、グアテマラ人の算数のレベルについて、感覚が鈍っていました。結果、12名中だれも5分では終わりませんでした。

一番できた子は、こちら。


グアテマラの教育環境下で、ここまでやれる子はかなり珍しいと思います。

この活動でかなり現時点での学力が見えました。

日本と比べちゃいけないとはわかっているけれど、小2を担任していた時、確か2分以内でやってしまう子も結構いたと思うので、それを思うと日本の子どもたちがいかに小さいころから鍛えられているかということを改めて感じました。日本の教育、学力レベルって、本当にすごいなぁ。

 

③算数の問題

全部で12問用意しました。

簡単と思われる四則計算から難しいとされる分数や面積の問題も入れました。

担任の先生からは、とても賢い子だといわれていた子も、実際にテストをしてみるとたし算、引き算の仕方が身についていないことが分かりました。

また、分数の問題はいくつかあったのですが、12名中だれも正解することができませんでした。

ただ、グアテマラ人のほとんどが解けないと思っていた面積の問題で、なんと4名が答えを導き出せていたことは驚きでした!(単位を正しくかけた子はいませんでしたが。)


(ちなみに、グアテマラでは「✓」マークは、正解という意味。)

5年前は、この問題はそもそもほとんどの先生が解き方が分からないという感じでした。でも、子どもたちがこれだけできているということは、ちゃんと正しく教えられている教員がいるということなので、とてもうれしく思いました。

 

④作文

ここでは内容もそうですが、スペイン語のスペルや文法を正しくかけているかという国語力も見ました。

これを読んでいて気付いたのですが、多くの子どもは普段話している単語のスペルを正しく書けていないということが分かりました。

ellos 「彼ら」という単語があるのですが、これを「eyos」と書いてしまったり、

hacer「する」を「acer」と書いたりと、かなり使用頻度の高い単語でさえ正しく書けていない子たちが多かったです。

この作文で見られる文字の丁寧さ、言葉の使い方も、その子の性格、学力などを見る貴重な判断材料になりました。

 

内容で言うと、ここでは勉強を続けて未来を切り開いていきたいという思いを表現してくれることを期待していました。2名の子どもの作文からは、特にそういった思いが伝わってきました。

 

⑤面談

この試験に合格したら、どんなふうにこの機会を生かしていきたいかや、今後どんなキャリアを積んでいきたいか、どんな大人になりたいかについて聞きました。

こちらが一つ質問すると、それに加えて自分の話を続けて話してくれる子もいれば、答えを一言言ってそれで終わりになっちゃう子もいたり、そういうやりとりの中から、その子の人となりややる気というものを見ていました。

一人だけ、まっすぐな目で本気の思いをぶつけてきてくれる子がいました。その子はとっても貧しい家の子で、家族のだれも中学校で勉強をしたことがないのですが、彼女はだからこそ自分はなにがなんでも勉強したいという思いをぶつけてくれ、私の心にも熱いものが伝わってきました。

 

英語の面接は、セレクションの評価のためではなく、現時点での英語のレベルを見るために行いました。

・1~10までの数が言えるか
・色を英語で言えるか
という、学校で教えているような単語を聞いたり、

・What is your name?
・Do you like~?

といった基本の英語で質問してみましたが、ほとんどの子どもは、かろうじて数と色が言えただけで、ほかは何も答えられませんでした。

というわけで、英語のレベルはほぼゼロだということが分かりました。教えがいがありそうです。

 

以上、ひとグループ1時間半程度の試験を行いました。

今日の午後、すぐにこの採点をしていたのですが、予想外の結論が出ました。

 

正直、12名から8名を選ぶということで、4名も落とさなければいけないのかぁと思っていました。

でも、今回の試験をやってみて、自分が信頼してこの2か月間本気でやり切れると思える子どもは、7名しかいませんでした。

あと1名のこの枠をお情けで合格にするか、それとも…。

 

日本からの支援者はもう8名確定しているので、8名の児童はプログラムに参加してもらいたいと思っています。でも、今回は私一人でやるのではないし、やるからにはのちに中学生の3年間を支援するに値する児童を選びたいと思っているので、そう考えると人数合わせの繰り上げ合格はどうもしっくりこない。

 

(ほかにもっとふさわしい候補者はいないだろうか…。)

 

この試験の合格発表は、次の月曜日の予定です。となると、ゆっくり考えていられない。

すぐに、現地協力者に電話し、このことを伝え、新たな候補者を追加で探したいのだが、どうだろう?というと、100%賛成してもらえた。

 

というわけで、今週末、まだ訪問していたなった元パイロット校の先生から新たな候補生を紹介してもらい、個別に面談と試験を行う予定です。

どうか、このプログラムにふさわしい子に巡り合えますように。