咲さま
お久しぶりですね。
10年ぶりくらいでしょうか。
あなたが絶望の中でうちひがれていると小耳にはさんだものですから、お手紙を差し上げたくなりました。
思えば昔からずっと、あなたは毎日毎日悩んでいましたね。(本当に悩むのがお好きなんですね。)
漠然とした不安、孤独との闘い、答えのない問いになんとか出口を探そうともがいていました。
10年前に比べたら、あなたもいろいろな経験を積み,自分の弱さや人生の不条理さもたくさん味わって、だいぶ角がとれたように見えますよ。
でも、また今日も涙を流していたんでしょう。
それだけ心が傷ついているんですね。
素直に生きるということは、心に痛みが伴うことも多いからね。
悲しみの中にいると,どうやって前を向いたらいいのか,わからなくなるわよね。
でも、知ってた?
悲しみを知る人にしか咲かせられない花ってあるのよ。
暗く寂しいところにひっそりと咲く花の美しさは、太陽の元でぐんぐん育ったひまわりとは違う魅力があるのよ。
自然界にはいろんなお花が必要でしょう?
ひまわりだけの世界なんてつまらないわ。
小さく健気に咲く花も,この世を美しい世界にするには必要なのよ。
だからあなたは、あなたの花でしか生まれない色と香りでこの世界を美しくすることを考えたらいいわ。人には、それぞれに与えられた持ち場と役目があるんだから。
だから、今は泣いていいのよ。
その痛みを体で味わって、思いっきり涙を流せばいいと思うわ。あなたの花が咲くにはその涙が必要なんだから。
涙っていうのはね、苦しむ勇気を持っているのことの証なの。だから、大丈夫。
あなたの中には,ちゃんとこの苦境を生き抜く強さがあるわ。
その涙の分だけ、あなた以外には誰も咲かせられない花になれることができるのよ。
誰かが言っていたわ。
人生はチェスのようなものだって。
ゲームに一般論なんてないって。
その時、その場で決める一手は、その状況に出会った者でなければ出せないもの。
だから、一瞬一瞬、与えられる課題に対し,その時できる精一杯の答えを出すことでしか、人生は開けない。
誰かと比べたってダメ。
だって他の人は、他の場所で,他の板の上で,他の対戦相手と勝負しているんだから。
その人のゲームを羨ましがってはいけないし、その人に自分のゲームの答えを求めてもダメ。
まだ不安なの?
まだ自分を哀れんでいるの?
大丈夫、
ちゃんと未来ではあなたを待っている。
「これで本当によかった。」
そう心から過去の自分に感謝する日が。
未来はいつだって不透明で、怖いわよね。
でも、大丈夫。
ここから先に,今からは想像もできないようなことが起こるし、出会うべく人には必ず出会う。
人生はそういうやってできているのよ。
今のあなたが先の人生をどう計画したって、どうせその通りなんかにならないから、未来のこと憂い嘆くのはもうおやめなさい。
そんなことより、今目の前にある課題に対して、最善の一手を出すことに集中しなさい。
過去も
未来も
確かに大切だけど、
一番大事なのは、
今この瞬間をどう生きるかよ。
未来のあなたも、人生のチェスの中で、いろんな課題に向き合っている。
だけど、ちゃんと答えを出し続けている。その時のベストを尽くして、闘っている。
だから、未来のことは未来のあなたに任せなさい。
大丈夫。
ちゃんと心から笑える日はくるわ。
私はそのことを知っているの。
だからあなたにお手紙を書いたのよ。
今日もあなたを味わいなさい。
この世の中で,あなたを味わえるのは、あなたしかいないんだからね。
あなたにしか咲かせられない花になりなさい。
じゃぁ、未来で待っているわね。
2034.10.31
咲より