実は、2日間熱と頭痛で寝込んでいました…。こういう時は、精神的にも弱気になるものですね。基本的には病気になっても薬などには頼りたくないと思う私ですが、今回は目の前のやることもあるので、早く回復したいと思い、日本から持ってきた薬を飲んで、本日復活。
熱などはあまり出さない方ですが、この2か月の間に2回も熱を出しているので、なんだかんだ異国での環境に体がまだ順応していないのかな?栄養あるもの食べて、体力つけていないとなぁと改めて思いました。
2日間、何もしないでほぼベッドの上で寝ていたので、元気になったらたまっていたエネルギーを発散したくなったので、今日はずっと先送りしていた夏の英語プログラムの振りかえりの続きを書きたいと思います。
★中学生編★
もともと私は中学校で英語を教え始めたのが、社会人の始まりでした。ですから、中学生に英語を教えるということに関しては、学習内容の熟知だけではなく、英語学習の意義や手法についての勉強や、自分自身でも実験と検証を重ねるなど、20代の若いのエネルギーの多くをこの分野に使ってきました。
そういう背景もあり、この夏のプログラムでもメインの対象者は中学生を思い浮かべながら構想してきたので、今回のこの中学生ペアの成果がなにより私には貴重なデータとなっています。
⑤中1日本女子×中1グアテ男子ペア
日本の女の子は、特に塾に通うこともなく、これまで英語に特別触れてきたことはないという純粋な日本の公教育で学んできた子でした。
つまり、英語の文法の知識的には、中1の1学期までの内容しかやっていませんから、3単現についても知らないし、疑問詞などもほとんど知らない状態でした。
ただ、とても勤勉な子で個人レッスンの時も必ず自分で英語を準備してから臨んでくれたため、こちらはとても進めやすく、持ち前の素直な一面も加わり、毎回のレッスンで教えたことをぐんぐん吸収していき、非常に頼もしかったです。
一方、グアテマラ男子くんは、小6の一年間をこの村で唯一のシュタイナー教育や欧米の先進的な方針を取り入れた私立の小学校で学んでいた子で、そこでは英語もある程度やっているはずなので、きっと英語はまぁまぁできるだろうと読んでいました。
しかし、ふたを開けてみると英語はあまりわかっていないということが判明!
一番困難を感じたのは、発音。
スペイン語はアルファベットをそのまま発音するのですが、この子はまさにそれを英語でもやってしまうので、発音の間違えがものすごく多い。さらに「y」や「j」は日本語で言う「ジ行」を発音するのですが、英語でもそれをやってしまうので、もう全く違う発音に。
初回の交流会では、そういった発音間違いも多発するし、文法も、単語も相手はわからないということで、お互い「?」が飛び交いました。
このときのことで、私の印象に残っているシーンがあります。初回の自己紹介で女の子の方がピアノを演奏している動画を披露したんですね。(←ちなみにものすごく上手な演奏だったのですが)これについて、相手は聞いているんだか聞いていないんだかよくわからない反応で、沈黙した後に、これについてノーコメントで全く別の質問を投げかけるという、キャッチボールのかけらもないことをしてきました。ここで私は黙っていられなくて、男の子に対して「なんかコメントないんかい!」と口をはさんでしまうほどで…。笑
初回は、なかなかズタボロのお2人でしたが、この2人には共通した特徴がありました。
それは、「勤勉さ」です。
日本の女の子は、先述の通りですが、グアテマラの男の子の方も、会を重ねるごとに本気度が増してきて、用意するプレゼン資料も毎回クオリティーが上がり、彼のやる気が見られました。また、発音でわからないところがあると、私に個人的にメッセージが来て「これって、なんて発音するの?」と自分から学ぼうとする姿勢があったり、その意欲は素晴らしいと思いました。
また、わからない時の聞き返し方や、相手が分からなかった時の対処法などを教えると、すぐに実践することができたので、中学生の中では一番英語の知識は低かったものの、英語力が一番伸びたののは、このペアだったと思います。
最後の会では、「相手を喜ばせる」がテーマだったのですが、日本の女の子は、なんと一緒に得意な折り紙を折ってみたいということで、画面越しにかぶとの折り方を伝授し、見事地球の反対側で折り紙のかぶとが出来上がりました!!
このアイディアは、素晴らしかったですし、男の子にとってもただの思い出だけでなく、実際に形あるものが手元に残り、素敵なプレゼントになったと思います。
その後、個人的に彼らは連絡先を交換し、今も時折メールの交換をしているらしいです。
最近は、男の子の趣味であるチェスをオンラインで一緒にやろうと女の子が誘われているらしく、一生懸命チェスの勉強をしているそうです。この夏の出会いが、これからの人生にどんな影響を与えていくのか、私も楽しみです!
事後インタビューでは、日本の女の子に学校での英語の授業の見方が変わったかについて聞いたところ、
「みんなは、なんで英語なんてやらないといけないんだろう?っ言っているけれど、私は、今回のプログラムで自分がどれだけ英語ができないかってわかったから、これからもっと一生懸命勉強したいって思うようになりました。」
というコメントをくれました。
私は、まさにこういった気づきを抱いてほしいと思って計画したプログラム内容だったので、とてもうれしく思いました。
正直、1か月で英語の力なんて1ミリくらいしか身につきませんよ。
でも、「できない自分」に出会うことで、目の前の勉強への取り組みが変わるということ、そして、「もし英語ができたら、〇〇ができるようになる」というビジョンを自分自身の中に見つけること、そこにこのプログラムの価値があると思っていました。ですから、彼女のケースは、私の中で大変良いモデルケースとなっています。
⑥中2日本女子×中3グアテ女子(リセ)
こちら、おなじみのグアテマラ女の子、日本語を5年間私とともに勉強しているリセのペア。
彼女とは、いつも日本語の勉強をスペイン語でしているという中で、突然この8月だけ英語の勉強をしたので、私としてはとてもフレッシュでした。
日本の女の子の方は、応募をいただいたのではなく、私の個人的なオンラインの生徒さんをスカウトさせていただき、今回のプログラムに参加してもらいました。
この子はもともと英語は良くできる子でしたし、賢い子だということはわかっていました。ただ、会話となると正しく言おうとして自信がなくなるので、このプログラムで実践力を磨いてもらうには彼女にとっても、とてもいい機会だと思ってお誘いしました。
はじめは「まったく知らない子と話すなんて…。」とあまり乗り気ではなかったようで、スタートのモチベーションはいまいちだったものの、毎回の発表では自分の部活動で行っているコントラバスの動画を見せたり、グループトークでは浴衣を着てカメラの前で披露してくれたりと(←グアテマラ人に大好評でした!)、毎回すばらしい発表で会話を盛り上げてくれました。
(この時演奏したのは、リセが好きだと言っていた鬼滅の刃の「炎」という曲。この辺のサービス精神が素晴らしく、リセはとっても感動していました。)
初回はどのペアもぎこちなさと緊張感しかありませんでしたが、このペアも例外なくかなりぎこちなさがありました。でも、ほかの参加者をいろいろと見てきた後で、このペアを見たときあることに気がつきました。
それは、リセの「素直な反応」がどれだけ会話を和ませるかということ。
確かに、このペアもぎこちなさはあった。でも、リセの反応はほかの参加者に比べ、初回からずば抜けてよかったのです。
わからない時は、「ん?」という困った顔をする。
わかった時は、「わかった!」というひらめいた顔をする。
おどろいた時は、「おお~!」と顔いっぱい表現する。
うれしい時は、「うわ~!」と最高にかわいい笑顔をする。
これって当たり前のようなことに思われますけど、初対面の人間に対してこれだけ、疑いなく自分の素直な感情を表せるって、なかなかできることではないのですよ。
5年前にリセと出会って、この子はほかのグアテマラ人とは何か違うものがあるなぁと感じることが何度もありました。私自身、彼女と話しているだけで私はいつも心が和まされ、癒され、励まされてきたけれど、それはこういった彼女の無意識のうちに醸し出ているコミュニケーションの高さがあってのことだったのかもしれない。
こういうリセを見て、とにかく会話では相手の発した内容に対する「反応」というものがものすごく大切なのだと思いました。言葉以前に、こういうコミュニケーション能力があるかないかで、その後の会話力の伸びも全然違ってくると思われました。正直、リセの英語力は、全然ダメダメです。それでも、このペアは日本の女の子のプレゼンの素晴らしさと、リセのコミュニケーション能力の高さでどんどん2人の会話は弾むようになっていきました。
最後の会では、即興で会話が進んでいく姿など、この1か月の2人の関係性の変化をまじまじを感じることができ、本当にほほえましかったです。
(写真は、日本の服を紹介している様子。)
その後、リセはこの女の子とつながるためにLINEをダウンロードして、今もつながり合っているようです。
リセには、これまでいろんな日本人の人と話をしてもらいましたが、こうして同年代の女の子と直接つながるのは初めての経験だと思うので、このつながりをこれからも楽しんでもらえたら嬉しく思います。
⑥中3日本男子×中2グアテ女子
日本の中3男子くんは、受験生で塾にも通い、忙しい中このプログラムに参加してくれました。このプログラムに参加を希望するのかという理由については、毎年市が主催している短期交換留学の機会もコロナでなくなってしまい、こういった生の国際交流ができる機会は今ほかになかなかないからだということでした。
受験で忙しいとは思いましたが、リアルに英語をツールとして使う機会と受験勉強を同時並行で行うことで、受験勉強としての英語の見方も少し変わったらうれしいなと思っていました。
さすが受験生ということもあり、現在完了形の文などほかの中学生組が知らない英文で文を考えられたり、単語をほかの子よりも知っていたりと中学生組ではチームを引っ張る存在として頑張ってくれました。
そして、やっぱり年齢が高いとコミュニケーション能力も高まってくるのか、英語の能力以外のささいな反応ややりとりがやっぱり上手で、グループレッスンでは活躍してくれた印象があります。
グアテマラの女の子の方は、昔から知っている子どもさんで、笑顔がひまわりみたいにかわいい女の子。とっても明るいので、英語は対してできないけれど、持ち前の明るさで乗り越えてくれるだろうと予想していたので、この中3の男の子と組んでもらいました。
ですが、このグアテマラの女の子は思ったより、英語ができなくて、これくらいの英単語は知っているだろう~と思われた英語もことごとく伝わらないという現象が…。
というわけで、正直英語のレベル的には少しミスマッチになってしまったペアになったかなと思いました。
ただ、面白い現象もたくさん生まれたこのペア。
このペアは初回からものすごいリアルな異文化体験が生まれました。
きっかけは、女の子方が「私は、夜間の学校に行っているの。」
といったことがきっかけ。
男の子、「夜間??なんで夜間なんだ?」
と疑問に思い、それをなんとか英語で尋ねてみると、
「朝と昼間は、働いているから。」と女の子。
男の子は、初めそれが聞き取れず(女の子の発音もかなり悪いため…。)、時間がかかりましたが、男の子がそれを理解したとき、
「え~、働いているの?まじで?」とぼそっとおもわず日本語でこぼしてしまうほど、驚いていました。
日本の中学生からしたら、昼間働いて夜間の中学校へ通うなんて世界知らないでしょうから、相当ショックを受けたらしいです。
そのあと、おおいかぶせるように
「あなたは働いているの?」
と聞かれて、男の子は、おどおどしながら
「No…」と答えていました。
互いの「当たり前」が崩される瞬間に立ち会った気がしました。
そのあと女の子がどんな仕事をしているのかとか、実際に仕事として行っている服の刺繍を見せるなどリアルな交流を楽しんでいました。
(女の子が自分の仕事を見せている様子。この村の女の子たちは、小さい時からお母さんから刺繍を習い、小学生や中学生くらいから仕事として自分でお金を稼いでいる子も珍しくありません。)
この2人のペアも会を重ねるごとに、親密度が増していったのですが、私としては最後の会では時間が押していて長引かせられないという事情があり、ゆっくり互いにコメントを言い合う時間を取れずにぶちっと終わってしまったことが心残りで、反省しています。
でも男の子の方から、今後も連絡が取れるようにメールアドレスの交換をしてもいいか?と尋ねられ、そういったことは予定していませんでしたが、彼から提案されたことをきっかけに、今後も自由につながってもらえるように調整しました。
事後アンケートでお母様から教えていただいたのですが、この男の子はどこかに応募する人権作文でグアテマラの女の子が昼間は働いて夜間の学校に行っていることを書いたらしく、この夏の経験を自分の中で咀嚼し、自らの言葉で外にアウトプットすることもできたようで、とてもうれしく思いました。
きっと、自分とは全く違う世界に触れたことで、新たに見えた世界があったのだと思います。
こういう経験もリアルな異文化体験。
私は、18歳の時にはじめてあこがれだった海外に行きましたが、いろんな面でのカルチャーショックが大きかったです。海外に行ったら、海外のことが分かると思ったのに、結局一番分かったのは、日本のことだったということは、意外な発見でした。
自分と異なるものに触れて初めて、自分の個性が見えてくるように、他国を知ることで、初めて自国を知る機会になるものです。
そういった経験がオンライン上で実現できたこと、大変うれしく思いました。
振り返れば、反省点はいろいろとあります。
でも、挑戦した甲斐は確実にあったし、果実もたくさんあったこの交流会でした。
おまけの話ですが、この中学生グループでは、グループレッスンも結構毎回楽しくて、最後にはこの3人の中にちょっとした親密さも生れたらしく、プログラム終了後に連絡先を交換したいと申し出があり、保護者の許可を取ったうえで、そのような機会も設けました。
ある子は、「これで、自分には海外にも県外にも友達がいるって、自慢できる!」って喜んでいました。
これは、このプログラムでの副産物ですが、国内の他地域の同世代とつながることにも楽しさがあったようです。
★まとめ★
・ノンバーバルな(非言語的な)コミュニケーションで言えば、年齢が高まるほど能力が高まる傾向。小学生に比べ、とっさの聞き返しや反応は上手に行うことができる。
・中学校で英語を教科としてしっかりと学んでいるからこそ、教える方は教えやすいし、プログラム終了後もこの経験が日常で生きやすい。
・使える単語が小学生より多いので、ファシリテーターの仲介度が低くなり、より直接的でリアルなコミュニケーションができる。
・初回の緊張感とぎこちなさはどのペアもあったが、次第に笑顔が増えていき、一か月間の間により親密な関係を築いていった。
・事後アンケートでは、どの子もみんなもう少し長くこのプログラムをやって、互いの関係性を深めてみたいと感じていた。
・プログラム終了後も、引き続き自分たちでつながろうとする意欲が見られた。
などなど。
以上、夏のプログラム中学生の振り返りでした。